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幻想だった「大学全入時代」

                 進路指導部長  星野 光徳

実質的な「大学全入時代」の到来といわれた平成20年度大学入試の結果を後輩諸君はどのように眺めただろうか。18歳人口のピークといわれた1992年度の大学志願者数122万人弱から年々減少して、2008年度入試の総志願者数は75万人程度となり、入学定員の減少幅に比べれば、大学入試全体では競争緩和が進んできた。しかし、2007年度入試から、大学進学志望者数と大学・短大の定員総数がほぼ一致するといわれた「全入」は、実際には全員入学どころか、人気の難関大学と不人気なまま定員を割る大学との「二極化」現象となって現れただけで、その「二極化」は今年度入試においても更に進んだといえる。それは本校の先輩たちの入試結果にも如実に現れていた。大学の「二極化」傾向は、恐らく諸君の想像を超えて、厳しい現実となっている。

 国公立大も私立大も、志望校入試を突破するには、その大学・学部に合わせた学習を早期に、かつ着実に実行しなければならない、ということが一層はっきりしてきたのだ。

では「その大学・学部に合わせた学習」とは何か。ひと言でいえば、その大学・学部の入試方式・科目・傾向を知り、過去問を中心とした受験対策を計画的に行う学習ということだ。そういう学習努力を積み重ねた者が今年も栄冠を手にしたのである。

 大学入試は難化したわけではない

 今春の大学入試センター試験は、全国平均得点が昨年に比べて多くの科目でアップした。つまりセンター試験は易化したわけだ。(これが隔年現象とすると来年は難化するのかも。)しかし、センター試験での得点が上昇すると、当然ながら国公立大への強気の出願が増え、私立大センター方式のボーダーラインが上昇する。いわゆる難関国立大の入試が激戦化し、本校でもセンター方式による難関私立大への合格者が少なかったのはその結果だ。

 18歳人口の減少で、今年のセンター試験受験者は昨年から約7千人減少の504,387人となったにもかかわらず、国公立大一般選抜への志願者は延べ487,777人(前年比99.8%)と、前年から殆ど減少しなかった。一般選抜の募集定員減もあり、国公立大への志願倍率は総平均で4.88倍と昨年よりわずかに上昇した。ただし、平成18年までは5倍を切ることのなかった国公立大志願倍率がここへきて下がっているのは事実で、前期日程のみの志願倍率は3.27倍と減少している(河合塾データ)。千葉大、茨城大、東京学芸大の教育学部などでは実質2倍を切るコースも少なくない。

 しかし、問題なのは数字上の倍率ではなく、受験生諸君の学力であり、志望大学・学部の合格ラインである。それは必ずしも上昇しているわけではない。志望大学・学部を早期に調べて決定し、受験への十分な対策を実行すれば、国公立大も私立大もチャレンジできる大学はむしろ増えているのだ。昨年も書いたことだが、人気の難関大は別として、私立大の4割以上が定員を割っているといわれる時代である。そういう「選別の時代」だからこそ、安易な選択をしてはならないのだ。

成高生の現状

 本校生の今春の入試結果として、千葉大15(既卒2)は昨年度の13(1)を超え、国公立大46(16)は昨年度の47(12)をほぼ維持し、5教科7科目を放棄しなかった先輩たちの努力がうかがわれるが、実際にはまだまだ合格できたはずだ。しかし、難関といわれる私立大においては志望が達成されたとはとてもいえなかった。早稲田大9(5)、慶応大6(1)、上智大8(4)、東京理科大25(11)、明治大14(1)、青山学院大9(1)、立教大15(6)、中央大11(3)、法政大24(8)、学習院大18(4)などは、昨年度実績を超えたものもあるが、全体としては不振だったといわざるをえない。

 どうして、こういう結果になったのか。結論を先にいえば、準備が遅く、不十分だったからだ。昨年4月に行った進路調査では、3年生の43%(156人)いた国公立大志望者のうち、実際に志願したのは34%、合格したのは8.4%だったということになる。志望者の19%、志願者の24%ほどである。もう一歩の調査、努力があれば、国公立大に合格できた者はもっといたはずだ。

 この4月の進路調査でも、新3年生の国公立大志望者は学年の46%、148人いた。首都圏以外にも目を向ければ、合格できる国公立大はある。単なる願望ではなく、本気で国公立大を目指すならば、センター対策「5教科7科目」を持続し、少なくとも2学期からは二次・個別試験対策を進めてほしい。

私立大においても、合格可能性は拡大している。センター試験でいうなら7割を超える程度の基礎学力の定着と、目指す大学に照準を合わせた学習を実践することだ。その大学・学部の過去問題(過去5年分)を早期に入手し、練習すべきなのはいうまでもない。今春の入試で慶応大学・商学部を突破したS君は野球部員だったが、限られた学習時間に徹底集中して英語を中心とした過去問題対策に取り組み、栄冠を手にした。練習で疲れ果てる日もあったろうが、彼は部活を勉強しない理由にはしなかった。

問われる基礎学力・自宅学習時間

全国の国公立大学では推薦入試やAO入試制度を見直す動きが出ている。学力試験を課さない推薦入試などで入学した学生は、やはり基礎学力が乏しく、大学の授業に堪えられないという結果が出ているからだ。つまり、研究実績よりも定員割れに苦慮している大学は別として、研究水準や国際競争力を問われる大学が、入学してくる学生に基礎学力を求めるのは当然であって、大学合格後に高校内容の補習をしなければならないような学生はとらないということだ。私立大でも推薦入試には学力試験を伴うところが増えている。

ただし、国公立大の推薦・AO入試で課されるのは、センター試験3科目ほどだ。これは一般選抜に比べればチャレンジし易いのは確かで、例えば今春の入試でも、2人の現役生が千葉大教育学部にAO入試と推薦入試で合格した。「センター3科目6割」というラインは、決して困難なものではないはずだ。そういう基礎学力は、特別の受験対策というより、普段の授業や自宅学習で身につく力である。

繰り返していうが、日常の学習こそが受験勉強の土台なのである。

現役合格を目指すならば、毎日3時間以上の自宅学習は必要だ。部活の疲れなどを学習しない理由にしてはならない。疲れていても眠くても実行するのがまさしく「強く勉める」勉強なのだ。

志望校を決定し、情報をキャッチし、具体的な準備を

来年度、千葉県立衛生短大と千葉県医療技術大学校が統合して、千葉県立保健医療大学が新設される。また、千葉大学工学部の10学科が再編されて6学類となる。県内の受験生には注目すべき変化だ。どちらも志願者の増加が予想される。普段から情報誌や大学案内、インターネット等を利用して、大学の動きや入試情報に注意しよう。志望大学・学部を早期に決定せよというのは、受験科目、受験方式などについて早期に対策が立てられるということだ。各大学の募集要項(7月〜)が発表された時点で、日程、場所、費用なども確認し、保護者とよく話し合っておくことも大切だ。

1・2年生にとっても遠い将来の話ではない。1・2年の6月には次年度の選択科目調査があるが、それは将来の受験科目につながるものであり、安易に考えてはならない。目指したい学問系統から学科、学部、大学を調べ、どういう受験方式になっているのか、どういう受験科目なのかを、自分で必ず調べよう。

また、情報だけでなく、志望する大学・学部を実際に見学することも必要な時代である。環境、施設、研究内容、授業、学生の様子、通学条件などは知っておきたい。2年生の夏までに見学してほしいが、まだ見学していない3年生は必ず夏休み前後のオープンキャンパス等を利用して自分の目で確かめること。ただし、いつもいうことだが、志望もしていない大学のオープンキャンパスに参加して、勧誘されたり説得されたりするケースもあるので要注意!

大学入試は「いきなり全国大会」

当然のことだが、大学入試に「地区大会」や「県大会」はない。「予選」もなければ、「お試し期間」もない。いわば、いきなり「全国大会」「本番」あるいは「国際大会」なのだ。だからこそ、よくよく考えて受験校を決め、充分な準備をしなければならない。努力なしには結果は出せない、というのはスポーツ競技も勉強も同じだ。安易な選択をした結果、後悔した先輩たちもいたのだ。

 いきなり「全国大会」となる戦いで後悔しないために、毎年述べることだが、次のことは認識しておいてほしい。

 「全国大会」に向けた「練習試合」といえるのは、やはり模擬試験である。学校で実施するものだけでなく、夏休みなどには自分で申し込む外部模試にチャレンジしよう。離れた会場まで出向き、見知らない受験生に混じっての「他流試合」は必ず刺激になるはずだ。

 推薦入試に幻想をもってはならない。国公立大のAO入試や推薦入試は、教科試験(センター試験など)や専門的な論文試験があるなど、一般入試を突破できる受験生にも難関だ。チャレンジしようと思うなら、その分野の動向やニュースについての知識は前提条件と心得よ。つまり、その分野について2〜3冊の読書はしておくように。

  私立大推薦入試も上位校はやはり難関であり、競争率も高い。容易に合格できるような下位校は、定員を確保するためだけの手段にしているので要注意。

 センター方式による私立大入試も要注意だ。センター試験だけで何校にも出願できるが、幻想をもってはならない。前述したように、今春入試ではセンター平均点がアップし、MARCH理科大クラスのボーダーラインは軒並み8割を超える高さだった。ただし、2〜3教科方式よりも4教科方式(文系でも数学を課すなど)の方が競争率は低い。

 国公立大では後期試験の廃止、定員減が進むだろう。千葉大・工などは東北大、北大・前期受験組までが流入する。前期・後期の選択(しかし出願は同時)には注意を要する。入試情報に目を配り、最後の最後までチャレンジすること。今春も国公立大後期試験で合格した先輩が8人いたことを忘れないでほしい。

 志望を貫けないまま、入り易い大学・学部に入学したものの、授業のレベルの低さ、学生のレベルの低さに失望して、受験のやり直しを相談にくる卒業生がいる。大学見学では、学生の様子まで見学してきてほしい。将来の職業への展望と同時に、大学生活そのものの充実が得られる選択をしよう。

     
 【平成19年度】   成田高校 進路指導部 2008.6
     

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